がんの経過・転移のしくみ

がんの経過

正常の細胞が、がん化してがん細胞になり、それが分裂増殖してがんの組織、がんの腫りゅうに至る過程は、がん化のしくみのとおりであるが、これらのがんはその後どのような経過をたどるのか?

増殖したがん細胞は、宿主(生体)の正常の細胞や組織を圧迫し、浸潤し、破壊し、時にはそれのみによって致死的な状態を引き起こす。
さらに一部のものは、遊離して全身にばら撒かれる。これを播種(はしゅ)と称するが、これが転移及び再発のもととなる。転移については、別に述べるが、再発について説明すると、一般的には、がんの原発巣を手術除去したにもかかわらず、再びがんが発生してくる場合をいう。

この再発を、さらに大別すると、2種類が考えられる。ひとつは、原発巣から起こった転移によるもの、もうひとつは、原発巣を除去したにもかかわらず、その部に極めて僅かのがん細胞が残って、これが発育増殖したものである。

このようにして、末期には、腫大した腫りゅうによる機械的な障害、神経圧迫、刺激による疼痛(とうつう)、血管侵襲、破綻による出血、そして腫瘍による栄養奪取と、体内栄養の消失による悪液質の状態に陥り死に至る。
種々の治療により、これらが阻止され、症状の改善、延命にまでもちきたらされるものがあることはいうまでもない。

転移のしくみ

がんが悪性である特徴のひとつとして、転移という現象があるのは、『がんの経過』で説明したとおりである。
がんがはじめにできた部位は原発巣と呼ばれるが、がん細胞の一部が、離れて、そこからからだの別の部分に移ることを転移という。転移巣は原発巣と同様に、あるいはそれ以上に発育増殖していき、そのために、からだのあちらこちらに、がんの病巣ができてきて、その結果、ヒトの命を奪ってしまうのであるから、恐ろしい特徴である。
転移には、血行性転移、リンパ性転移、破壊性転移及び接触性転移の4型がある。

血行性転移 原発巣のがん細胞が、がん組織から遊離して、血液の流れの中に入り、全身のほかの部分に移ることをいう。

リンパ性転移 この場合は、原発巣のがん細胞が、周囲のリンパ節に入り、そのリンパ液とともに運ばれて、次々とリンパ腺をおかしながら上行して、最終的に、左の鎖骨の部分で、静脈に入り、全身に広がる。

破壊性転移 がんがどんどん増大し、周囲の臓器、組織を破壊して、そこに移っていく場合で、例えば、胃がんが腹腔内進入してがん性腹膜炎を起こすようなものをいう。

接触性転移 がんが接触している臓器に移っていくもので、胃がんが肝臓に移り、肝がんを併発していくようなものをいう。

上の4つの型式のうち多いのは、血行性転移とリンパ性転移である。この場合脈管(血管及びリンパ管)に入ったがん細胞は、播種といって、全身にばら撒かれて、それぞれ転移を生ずるわけであるが、これらのがん細胞は全部増殖して転移巣になるかというと必ずしもそうではない。
これらの臓器組織に流れ着いて、そこに定着し、増殖するためには、いろいろな条件が左右するらしく、それらについての研究も広く行なわれている。

ヒトのがんについてみると、原発巣胃がんで、最も転移しやすい所は、肺、肝、これに次いで、骨髄、副腎、比較的少ないのは、腎臓、膵臓(すいぞう)である。
肺がんが最も転移しやすい臓器は、肝、次いで、腎、骨髄、副腎、脳であり、少ないのは膵である。肝がんは肺に転移しやすい。乳がんは、骨髄に転移しやすく、肺がこれに次ぎ、さらに肝が続いている。膵がんは、肺、次いで肝に転移がみられる。骨髄のがんでも、肺、次いで肝に転移がみられる。腎がん及び子宮がんでは、比較的少ない転移臓器として肺があげられる。
全般的にみて、転移の多い臓器は、肺及び肝ということが言える。
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